●カーペンターズ「緑の地平線」

中学校の時本当はイエスタデイ・ワンスモアのLPをステレオで聴きたかった。そして親に頼んでカーペンターズのカセットテープを買ってきてもらったのがこの緑の地平線(ホライズン)だった。期待外れであったが、早速自分のラジカセで聴いてみた。オンリー・イエスタディは当時ヒットチャートの上位を占めていたし、プリーズ・ミスター・ポストマンも大好きな曲だったので満足したが、その他の曲はさっぱり。FM放送でこのLPの特集をやっていたのを聴いた時、
人気や特徴のある曲というよりは、しっとりとした名曲揃いで、熱心なファンなら大満足するだろうということを語っていた。時は流れて43年後、今このアルバムの地味な曲「愛は木の葉のように」をしみじみ聴いている。当時のわたしには逆立ちしてもこの曲の良さが分からなかった。カーペンターズの歌は歌詞の意味が分からなくても、曲想でその雰囲気を十分味わうことが出来る。そして別れと新たな出発への決意を感じ取ってこの曲の歌詞を見た時に驚いた。自分らしく生きる事こそ幸せへの最も大切な近道という事を心から納得したときに、すべてが始まるというメッセージは当時のカレンに最も必要なメッセージではなかったか。そして人生のやり直しをしたいと思っている今の私にも同じである。
■Love Me For What I Am (愛は木の葉のように) - 日本語訳
私たち初めて出逢った夜に恋に落ちて
今まで幸せだった
後悔なんかしていない
日常の問題なんか苦にもならなかったし
でも最近ちょっとした変化が
ゆっくりと影を落とし始めたの
あなた私のやる事成す事にダメ出しばかっり
私の生き方変えようったってムリなんだから
だって私とっても満足してるんだもの

* ありのままの純粋な私を愛して欲しいの
あなたの都合の良いように変わって欲しいのなら
愛してなんかくれなくて結構よ
ましてあなたの想像を叶えるための道具だと
私のこと利用しているのなら
もう私のこと愛してなんかいないわね
別れて自由になるわ

あなたの望みが

私には受け入れらないときは
あなたを繋ぎ止めるために
今の自分や理想の自分を偽ったりはしない
あなたの期待に沿うような
理想の姿は心の中にしまってちょうだい
愛って二人の理想が全部重なるようにはできていないの
これまで二人で築いてきた人生を捨て去る
新たなスタートの時

ありのままの純粋な私を愛して欲しいの
あなたの都合の良いように変わって欲しいのなら
愛してなんかくれなくて結構よ
ましてあなたの想像を叶えるための道具だと
私のこと利用しているのなら
もう私のこと愛してなんかいないわね
別れて自由になるわ

(* を繰り返す)

ましてあなたの想像を叶えるための道具だと
私のこと利用しているのなら
もう私のこと愛してなんかいないわね
別れて自由になるわ

<緑の地平線収録曲>
希望の鐘 - "Aurora" - 2:14
オンリー・イエスタデイ - "Only Yesterday" - 4:12
愛は虹の色 (デスペラード) - "Desperado" (Don Henley, Grenn Frey) - 3:37
プリーズ・ミスター・ポストマン - "Please Mr. Postman" (William Garrett, Brian Holland, F. Gorman, Georgia Dobbins, Robert Bateman) - 2:50
アイ・キャン・ドリーム - "I Can Dream, Can't I?" (Irving Kahal, Sammy Fain) - 4:58
ソリテアー - "Solitaire" (Neil Sedaka, Phil Cody) - 4:39
ハッピー - "Happy" (Tony Peluso, Diane Rubin, John Bettis) - 4:37
グッバイ・アンド・アイ・ラヴ・ユー - "(I'm Caught Between) Goodbye And I Love You" - 4:04
愛は木の葉のように - "Love Me For What I Am" (J. Bettis, Palma Pascale) - 3:30
悲しみの夕暮れ - "Eventide" - 1:32





●映画オリジナルサウンドトラック「ピンポン」

手持ちCD約2000枚の内、1700枚程度をディスクユニオンに処分した。この直後CDロスに陥った。「もう僕はどう生きていったらよいか分からない!」という状態になったが、一生懸命リッピングした音源を聴き直し、感想をアップしていく事に希望を見出したのであった。ということでまず最初に映画「ピンポン(オリジナルサウンドトラック)」から。

湘南を舞台に繰り広げられる高校生卓球の物語。幼なじみの星野裕(ペコ)と月本誠(スマイル)が高校になってからも続く友情に、キャップテン大田、タムラ卓球場出身の佐久間学(アクマ)、海王学園高校の風間竜一(ドラゴン)などを中心に個性的な人物が様々なドラマを巻き起こす。物語の核心はあくなき闘争心で勝利を目指したドラゴンより、ひたすら卓球を愛し夢を追い続けるペコが勝利するということ。そして決勝戦に進んだペコとスマイルの戦いはもはや勝敗を決めることがなくなるほど平和に満ちたものだったということである。この映画はわたしたち家族の困難な時期に夢と希望を与えてくれた。そしてその影響力はストーリーからだけでなく優れた音楽から導かれていたことも合わせて言っておきたい。全体にテクノポップ風のグルーブ感豊かな音楽だが、浮ついたところなく地に足の着けて湘南と卓球を感じさせているところが見事。一度映画を見てから聴くと元気が出るよ!

1 YUMEGIWA LAST BOY / スーパーカー      ★★★★★
2 スプリングスポンサー / サトル         ★★★★☆
3 Strobolights / スーパーカー          ★★★★☆
4 la peggi / 石野卓球           
5 エデン / ダブ・スクワッド        
6 ライズ / Sugar Plant
7 ブレークダウン / MAO
8 ビフォー / GROUP
9 キャンドビート / WORLD FAMOUS
10 NO sun / 砂原良徳              ★★★★☆
11 Scatterin'Monkey / ブンブンサテライツ    ★★★☆☆
12 シカボウ / cicada
13 good timing of world of love song,The / 砂原良徳 ★★★★☆
14 エンジェリックバタフライ / MAO       ★★★☆☆
15 Free Your Soul / スーパーカー         ★★★★☆




●ビルエヴァンス「ウィズシンフォニーオーケストラ」
何かのきっかけで今まで理解できなかったことが見え始め、
いままでの混乱の原因が自分自身の心に潜んでいたと気が付き始める時、
その解決を心を開いて真剣に求め始める時、
その理解は加速度的に増し加わることを経験したことがあるだろう。
そのように頭がクールになっているときに、
ポジティヴに考えを整理していく事が楽しくて仕方がなくなるほどになる時にピッタリの音楽がある。
行き過ぎた過熱をクールダウンし、しかしあなたが時間をかけて考える今のテーマはとても大切で意味があると励ましてくれるかのよう。
恐らくこのアルバムはジャズやクラシックを知らなくても、
自分自身を静かに考えるのにぴったりな音楽と思ってくれるに違いない。
ottava小室さんが教えて下さったクラウス・オガーマンがオーケストラの編曲に関わった作品であることを知り、
今後彼の関わった作品を深く知りたいと思っている。
このアルバムが理性的で情感を上品に?表現できているのは、
オガーマンがビル・エヴァンスの伴奏役に徹しているからなのか(ビル・エヴァンスは「僕はいつもインタープレイ」だよと言うに決まっているが)、
それともオガーマンの持ち味であるのかは他の作品を聴いて判断していきたい。



●メンデルスゾーン交響曲全集 クルトマズア/ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団
作曲家のイメージの音というのは勿論聴き手一人一人の数だけあると思う。
しかしクルトマズア/ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団のメンデルスゾーンの演奏についてはこれほどピッタリの音色はないといつも思う。
メンデルスゾーンの持つ清らかさと豊かな色彩がちりばめられているところ、そして心を敬虔にしてくれる明確なメロディーは彼等の演奏でなければ満足できない。
所謂本場物にはあまり良いものがないとか、クルトマズアは個性に乏しいとか色々言われがちだが、誰が何と言おうとわたしはこの演奏がメンデルスゾーンの基準となるべき演奏であると信じている。
讃美歌に用いられているクラシック作曲家の名前を挙げるとすればバッハが筆頭に挙げられるが、二番目はメンデルスゾーンである。彼はユダヤ教の信仰を堅く保っていた祖父を心から尊敬し、かつ改宗した後は熱心なルター派の信者でもあった。わたしは劇的でドラマチックな演奏の背景に宗教を感じさせる清らかさがなければメンデルスゾーンではないと思う。シューマンやブラームス同様、すべての交響曲で抱擁された感情の満足を得ることが出来る。



●ラフマニノフピアノ協奏曲3番 ホロヴィッツ/オーマンディ/ニューヨークフィル
18才の時バイトでためたお金で買ったステレオに夢中になり、
学生寮でFMレコパルを読み漁っていた頃、
ホロビッツの復帰コンサートの漫画が載っていたのを目にした。
数々の挫折を乗り越えて復活した姿はどこかラフマニノフを想像させるところがあり、
曲目もラフマニノフという事もあって非常に注目された一枚だったことを覚えている。
実はわたしはこの頃まだラフマニノフを聴いたことがなかった。
友人からラフマニノフのピアノ協奏曲は良いよとの推薦があって、
秋葉原の石丸電気本館で二時間粘って買ったのがこの盤だった。
友人は勿論2番を勧めたのだが、
何も知らないわたしは話題になってるこの曲がラフマニノフで一番有名と思ったのだ。
寮に帰ってから早速聞くと何やら技巧的な非常に古臭い音が聴こえてくる。
わたしの部屋に入ってきた友人は「あっ、3番買ってきたのか」とため息をついた。
全体を通して非常に技巧的な音楽で、その上手さとホロビッツの復活の姿が会場大きな拍手の理由と理解した

そしてこの盤はしばらくお蔵入りの一枚となった。
時は37年たち本日何故か久々にこの一枚が気になって聴いてみた。
ラフマニノフの3番の2楽章のフレーズをいつも心の中で思い浮かべるほどにこの曲が好きになっていたが、
この盤のホロビッツの溢れる情熱や若々しさ、伴奏するオーマンディとニューヨークフィルの
まるで上品なニス塗りの家具のような落ち着いた品格のある演奏に心から惚れ直した。
正直言ってホロビッツの魅力を十分に分かってなかったわたしは、
カップリングのラフマニノフピアノソナタ2番で彼の魅力を心から理解することが出来た。
この曲の終楽章は正に溢れる情熱の爆発である。
その演奏は指が鍵盤をたたいているのではなく、
彼の体がピアノに乗り移り、霊が会場の空気の振動のすべてを支配しているかのようだった。
長い時間をかけてようやくわたしは会場の大きな拍手の理由を本当に理解することが出来たと思う。



●カーペンターズ「青春の輝き」
先日カーペンターズの話題を見かけてふと考えたことがあった。
彼女の歌の心地よさは何か。それはどこから来るのか。
わたしを見てと呼びかける様な、ある意味切ない、訴えかける様なその歌声は、当時13歳だったわたしの心にシンクロするように沁み込んできたあの歌声の秘密は何か。

その理由は彼女の拒食症による死に至るまで、ずっと謎のままであった。
決めつける様な断定的な言い方は避けたいが、拒食症は多くの確率で母親、あるいは両親との人間関係に起因しているとのことである。

家族の期待を一身に背負わされ、自分の意志を押し殺し、親の喜ぶことを第一に考えて、わき目も振らずにいい子を演じ続けた人生。
もはや自分の本当に好きなもの、嬉しいことを自分で考えるのも遠い昔に忘れ去り、ただ家族に、両親に抑圧され、マインドコントロールされ、嫉妬によるいじめを受け、その上でさらに自分の両親は何と愛情深いのだと思い込んでいる。
このことを本人は無意識に感じているが、言葉に出して自分の心を素直に表現できない。消えていきたい、このまま安らかに眠りたいという思いになって何の不思議があろうか。

この気持ちを含んだ歌声がわたしの心とシンクロしたのである。
自分の孤独を理解してくれる可能性のある人が、言葉に出さずとも寂しさを訴えかけるから沁みるのである。思い出して欲しい。自分の過去の友達でカーペンターズを愛する人はどんな人だったかを。その中の幾人かは人恋しい訴えかける様な目をしていなかったか。

彼女がもし自分の価値観を変化させていたら死ななかっただろうか。現状の人間関係から離れて、ありのままの自分を赦し、それを受け入れてくれる本当の友人がいたら。しかしその時は、カレンのあの歌声は二度と聴こえなくなってしまうかもしれない。
明るい幸せな彼女を受け入れることが僕らは出来ただろうか。




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